同じ英語圏の諺でもアメリカとイギリスでは「転がる石に苔むさず」のようにまったく逆の解釈が成り立つケースもありますが、一般的に諺には、反対の意味を持つ諺が存在しています。
たとえば先に紹介した「船頭多くして船山に登る」は指揮を取る人が多いと間違った方向に行くという教訓ですが、これに対して「三人寄れば文殊の知恵」という諺があります。
たいして頭のよくない凡人でも3人集まれば文殊菩薩のように優れた案が出てくるという喩えで(実際は凡人が何人集まってもたいした案が出ることはないのですが)、厳密に言えば「船頭多くして~」の対語にはなりませんが、人数が多いという意味で対語に用いられます。
「売りのつるに茄子はならぬ」という諺には「氏より育ち」という対語がありますが、これもどちらの諺にも否定的と肯定的な意味で捉えることができます。
ただし「女房と畳は新しい方がいい」とか「女房と味噌は古い方がいい」になると、諺というより慣用句になりますが、新しいは畳に、古いは味噌に対する述語なので女房は関係ありません。
女房は新しくても古くてもいいのが男の勝手な言い分なわけですね。
諺はつねに「逆もまた真なり」と都合のいい部分を持っていることが特徴でしょう。