著名人の名言が重いのは、その背景が知られているからです。
たとえば国家の存亡、人民の生死が委ねられた政治家や軍人は極限まで追い込まれた上に決断を下すのですから、その重圧の中から生まれてくる言葉には当然、重みや存在感があるわけです。
「危険が迫った時、逃げ出すようでは駄目だ。かえって危険が二倍になる。決然として立ち向かえば危険は半分に減る。何事に出会っても、決して逃げるな」
1940年から1945年まで英国首相を務めたウィンストン・チャーチルの言葉です。
第二次世界大戦、英国はドイツの猛攻にさらされて陥落寸前でしたが、ドイツ空軍のイギリス本土空襲戦、バトル・オブ・ブリテンで勝利を収めて形勢を逆転、ノルマンディー上陸作戦に参加して戦勝国の地位をアメリカ、ソ連に次いで獲得した時の首相です。
バトル・オブ・ブリテンに敗北していたら英国はフランスの二の舞いになるところでしたが、チャーチル内閣主導の元、民間企業まで巻き込み、さらに当時としては最新のレーダー網をドーバー海峡に敷くことでドイツ空軍を撤退まで追い込みました。
チャーチル自身は第一次世界対戦で海軍大臣の時にアントワープ防衛やガリポリ上陸作戦で失敗、第二次対戦でも北欧戦で敗退するなど負けを経験していますが、それでも前述の言葉が出るというのは敗戦も糧になっているという証ですね。